財産分与について
財産分与とは、結婚してから夫婦が協力して築いた財産を離婚するにあたって分配することをいいます。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となるのは、基本的には、結婚期間中に夫婦が共同で形成した財産(夫婦共有財産)に限られます。これには、共有名義のマイホームや自動車や現在の勤め先の予定退職金など結婚後に夫婦が協力して築いた共有名義の財産だけでなく、どちらか一方の名義になっているものの、結婚後に夫婦が協力して築いた財産である預貯金、株、不動産、自動車なども含まれます。
他方、結婚前から有していた財産や、結婚後であっても親兄弟から贈与されたものや相続財産などの相手の協力なしに取得した財産(特有財産)については、一般的には財産分与の対象となりません。
分与の割合はどのように決めるか?
大前提として、財産分与に当たっては、自分名義の財産だから自分のもの、という訳ではありません。考え方としては、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度によって決まる、とされています。
しかし、財産形成に対して、どちらがどれだけ貢献したかを判断するのは非常に難しい問題です。原則としては、夫婦が5:5で分け合う「2分の1ルール」が定着しています。但し、医師や自営業などで、相当な高収入の方のような場合には、2分の1ルールが適用されない場合もあります。
以下のような事でお悩みの場合は、弁護士にご相談ください。
- ○財産分与について、どこまで主張できるか知りたい
- ○住宅ローンが残っている自宅の財産分与について知りたい
- ○財産分与について、相手との間に意見の違いや争いがある
オーバーローン不動産についての財産分与
夫婦で購入した不動産をどうすべきかは、離婚の際の大きな問題のひとつです。残った住宅ローンを誰が払っていくのか、不動産は誰の名義にするのか、保証人の問題はどうするかなど、問題はさまざまです。
不動産の処理については、二つの場合に分けて考える必要があります。
⑴ オーバーローンとなっていない場合
たとえば、今、不動産を売却すれば2000万円で売れるのに対し、ローン残額が1500万円であるとします。この場合には処理の方法はさほど難しくはありません。
この場合、不動産の価値がローン残額を上回っていますから、もし不動産を売却してローンを返済すれば、手元に500万円の現金が残ります。そうすると、この住宅には現在500万円分の価値があると考えることができますので、原則としてこの500万円を2分の1ずつ分配すればいいのです。
具体的な分配の方法としては、不動産を売却し、500万円を2分の1ずつ分配する方法、あるいは、夫または妻いずれかが住宅に住み続けたまま、住宅から出て行く方に対し、500万円を一括ないし分割で支払うという方法が考えられます。
⑵ オーバーローンの場合
たとえば、不動産を売却すると1000万円で売れるけれども、ローン残額が1500万円あるという場合です。これがオーバーローンという状態です。
土地の価値はバブルなどがなければそれほど大幅に価値が下落するということはありませんが、建物は購入して住み始めると価値が急激に下落していきます。他方で、住宅ローンは通常20年、30年といった長期の返済が予定されていますから、すぐには減りません。そのため、不動産を購入して年数を経ない内に離婚する場合には、オーバーローン状態になっていることがほとんどです。
この場合の処理方法は非常に困難を伴います。オーバーローンの場合は、不動産を売却して精算するという方法について、銀行がなかなか応じてくれないうえに、仮に売れても売却代金で精算し切れなかった債務が残ってしまうからです。
ⅰ.住宅から出て行く夫が住宅ローンの支払いを続けて、妻子が住宅に住み続ける
この場合の処理方法として考えられるのは、まず、たとえば住宅から出て行く夫が住宅ローンの支払いを続けて、妻子が住宅に住み続けるというものです。
そして一般的には、住宅ローン完済後に名義を移すなどの処理をします。ただし、この場合、夫には大変な負担が伴います。夫は自分の住居費と住宅ローンの二重の負担を抱え、さらには妻側に対し養育費も支払わなければいけないからです。
その際、夫側からよく主張されるのは、住宅ローンを支払っているのだから養育費から住宅ローンを控除してほしいというものです。しかし、現在の家庭裁判所の運用では、基本的に住宅ローン全額を控除するということはありません。不動産が夫の名義である以上、居住していなくても住宅ローンの支払いが夫の財産形成にもなっているというのが理由です。
では、いくら控除するのかという点についてですが、住宅ローンの2割ないし3割ほどを養育費から減額するという方法が多いかと思います。しかし、実際には、裁判官の見解も一致しておりませんので、担当する裁判官によってかなり幅のある処理となっているのが現状です。
夫が自分で購入を決めた不動産なのだからと腹を括って支払いを続けると言えば話は簡単なのですが、なかなかその覚悟は容易ではないでしょう。自分が住みもしない住宅のローンを支払いたくないという直感的な拒否反応から、なかなか支払いに応じられないということもままあります。
ⅱ.住宅に住み続ける妻側で住宅ローンを支払う
もうひとつの処理方法は、住宅に住み続ける妻側で住宅ローンを支払うといったものです。妻が正社員で給与も安定しているなどの条件がない限り、住宅ローンの支払義務者を妻に変更することは銀行が応じませんので、実際には夫が支払義務者となったまま、妻が支払いを行うということになります。
当然、これに対しても妻は給与が少ないのにその中から住宅ローンを支払うことはできないとの反論があり得ますので、この解決も容易ではありません。
上記のいずれが良い解決かということはありませんし、それぞれの夫や妻の納得の問題になります。
まとめ
以上のように、オーバーローン状態の不動産についての処理は大変な困難を伴います。また、養育費から控除する額についても、見解が一致していないことから、調停委員や裁判官から不利な解決を強いられることもあり得ます。
不動産の処理を伴う離婚の場合には、ぜひ弁護士へ相談されることをおすすめします。
子ども名義の学資保険と財産分与
学資保険と財産分与
学資保険は、主に進学時等の時期に学資金が給付される子供のための積立貯金・入院等の医療保障・子供の死亡保障等の目的があるほかに、契約者(親)に万一のことがあったときにその後の掛け金の支払を免除されるといった性質があります。この学資保険は、契約者が夫か妻、被保険者が子とされている場合がほとんどです。そうすると、子どもの財産であり、財産分与の対象とはならないかのようにみえますが、夫婦の財産を使って保険料を支払っている以上、基本的には財産分与の対象となります。
財産分与の方法
そして、この場合の財産分与の方法としてまず考えられるのは、学資保険を解約して返戻金を受け取り、それを夫婦で分配することが考えられます。もっとも、保険というものの性質上、今まで掛けてきた保険金に比べ、解約返戻金は大幅に減額となることもあることを事前に理解しておく必要があります。そこで、夫婦で合意ができるのであれば、子のために使うことを条件として分与の対象としないということも実務上多く見られます。子の教育費のために夫婦で掛けてきたのですから、その選択が一番スマートだとは思います。 あるいは、学資保険を分与の対象とはするが、解約はせずに、契約者を親権者へ変更し、親権者の側が別居時の解約返戻金相当額の2分の1相当の金銭を支払うという処理も考えられるでしょう。この場合に忘れてはならないのは契約者を必ず変更するということです。
まとめ
以上述べてきたことをまとめると、子の学資保険は基本的には財産分与の対象とはなりますので、原則的には解約返戻金を2分の1ずつ分配することになりますが、子の教育費のためということを考えると、夫婦で合意して、分与の対象としない、あるいは、解約せずに契約者の変更などの処理を行うのがなるべく望まれる解決ということになります。
退職金の財産分与
退職金は、一般的には、将来支給される蓋然性が高ければ婚姻後別居に至るまでの期間に対応する部分については清算的財産分与の対象とすべきとされています。ただ、将来もらう退職金をどのように評価するかは難しい問題で裁判例も別れているところではあります。家庭裁判所の実務では、概ね、別居時に自己都合退職した場合の退職金相当額を考慮する(婚姻前労働分は差し引く)という考え方が多いです。もっとも、定年退職が比較的近い、概ね5年以内程度の場合には、定年退職時の退職金から、別居後労働分(及び婚姻前労働分)を差し引き、中間利息を控除して審判時の現価を算出して算定するという方法が用いられることもあるようです。
財産分与時の不動産売却の仲介手数料について
離婚の手続中に、財産分与を行うために自宅不動産を売却しなければならない場合には、多くの方は不動産業者に媒介を依頼し仲介してもらうことになると思います。その際に不動産業者との間で発生する仲介手数料について簡単にご説明したいと思います。仲介手数料とは売買契約が成立した際に、売り主と買い主がそれぞれ不動産業者に支払うもので、この仲介手数料には宅地建物取引業法による上限の制限があります。 すなわち、売買価格が ・200万円以下の金額:5%+消費税 ・200万円を超え400万円以下の金額:4%+消費税 ・400万円を超える金額:3%十消費税 400万円を超える物件については、上記各金額部分について、それぞれ計算方法が違いますので、概ね、売買価格×3%+6万円+消費税という速算法を用いて計算します。ただし、上記のとおり、あくまで、これは上限ですので、不動産業者によっては、手数料半額などのサービスを行っているところもあります。また、上記上限を超える手数料を提示してくる、あるいは、あたかも上限額が法律で一律に決められた手数料であるなどの説明を行う業者にはご注意下さい。支払方法については、一般的には契約締結時に仲介手数料の50%を支払い、引き渡し完了時に残りの50%を支払うことが多いです。
解決事例Case
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